◆こどもたちに、ものを大切に使うことを教えたい
「ものを大切にする子に育てたい」。そう考えない親なんて、いませんよね。
だけど、大人がいくら言い聞かせたって、こどもたちは、彼ら自身が「これは大切なものだ」と、お腹の底から実感していない限り、ものを丁寧に扱ったりはしません。壊したり、無くしたりして悲しむこともありません。
我が家の娘は、生意気盛りの小学生。毎週のように、ほとんど新品の鉛筆や消しゴムを何かしら失くして帰ってきます。そして、ものを失くすこと自体よりも、私が頭を抱えているのは、彼女が、一切悪びれないという点なのです。「だって、学校で落としちゃったんだもん。えっ、名前?書くの忘れてた」。
「こう育ってほしい」なんて親の気持ちや言葉の多くは、こどもにはなかなか響かないようです。ああ、どうしたら伝わるのかなあ。
◆人の肌に、生活に、想いに馴染む。木組みの家具と小ものたち
つみ木家具店を営む上田大輔さん、亜紀さんご夫妻は、その「伝えかた」をよくご存知のように思います。それも、うるさいお説教ではなくて、もっと人の“お腹の底にすとんと落ちる”ような伝え方を。
つみ木家具店の製品の大部分は、お客さんのオーダーが発端になったものだと上田さんは言います。
「お客さんは、各々に何か困っていること、不便なことを抱えて家具の依頼にいらっしゃいます。それを解決するのが、デザインの役割だと思っているんです。単に、見た目だけ整ったものを作ればそれでいいというわけじゃない」。
新しい家具を家に入れるのは、誰かの人生の節目だったり、生活を少しだけ良くしたいと願ったときだったり、いずれにしても、家族にとって重要なタイミングであることが多いでしょう。その時、家族が大切にしたい想いに、つみ木家具店は、プロの視点と技術で応えて手助けしてくれるのです。
今回、オヤノミカタストアで取り扱いが始まるのは、つみ木家具店が作る箱ものやおもちゃなど、かわいいコモノたち。これらのコモノは、実は、大物家具を作る際に出た端材を使って作られています。
「大型家具に使う木は、樹齢にして数百年も生きたもの。そして、家具に形を変えてからも、生きて呼吸を続けるものです。だから、家具になれる大きな木材を、あえて細かく切り刻むということはしたくないんです。欲しいと言ってくださる方には申し訳ありませんが、コモノばかり、たくさんは作れないことをご了解いただけたらうれしいです」。
また、つみ木家具店の家具やコモノは、ねじや釘を使わず、木組みだけで組み上げる点にも大きな特徴があります。木は、雨の日は湿気を吸って膨らみ、晴れた日は乾いて痩せるのだそう。上田さんが、自店の製品にねじや釘のような金属部品を一切使わないと決めているのは、この“木の呼吸”を妨げないようするためのことだといいます。
使用する木材にもこだわりがあります。木は、すべて無垢材。樹脂系の塗料は一切使わず、何も塗らずに、または天然のオイルを塗って仕上げます。木肌に触れると、木材の種類ごとに手触りの違いがあることもわかり、木の素材の柔らかさとぬくもりが直に手のひらに伝わります。
そうと知れば、木肌に触れることが、まるで、木のいのちに触れることのようにも感じられるでしょう。
私は、娘にこう伝えるだけで良かったはずなのです。
「これは、上田さんがあなたのために作ってくれた品物なんだよ」。
「触ってごらん。すべすべで気持ちよくて、木の香りがするね」。
「木の家具やコモノは、ほら、今も生きて呼吸してるんだって」。