我が家の長男は、春から小学生。
マイペースで、お調子者で、読書と数字が好きな6歳です。
今日に至るまで、本当に、あっという間でした。
大きなお腹を抱えて、雪が降る中を、産院まで歩いたこと。
逆子だったから、この世に出てきた瞬間は、顔じゃなくて小さな足が見えたこと。
それから退院して、家での子育てが始まり。
上に着せる布団の量すらわからなくて戸惑ったこと。
オムツを変えても、お乳をあげても、何をしても泣いた夜。
泣き続ける時間が、途方もない長さに思えたこと。
初めての子だから、いろいろと全力で、わからなくて。
もう、いっぱいいっぱい!ということも多かったです。
でも、こうしてこどもを育てる中で、実感したこともたくさんあります。
そのひとつが「たくさんの方に助けられて、今がある」ということ。
今でも覚えているのが、生後半年ぐらいの頃に、息子と買い物に出かけたときのことです。
その頃の私にとって、買い物はいい気分転換。
めったに外に出ないので、片道徒歩20分程度の距離は、とても好きな道のりです。
身軽な格好で、リュックひとつでおでかけ。
でも、行きは晴れていたのに、帰りは怪しい空模様。
うっかり、傘を持たず来たことを思い出しました。
これはマズイ。。。通り雨かも。
降らないで、降らないで、と祈りながら、足早に家路を行く私。
でも、家まであと5分というところで、ポツポツと降り出し・・・。
もう本当、みるみるうちに。
あっという間に、ザーッと、本格的な雨になりました。
そこは、屋根も何もない、がらんとした交差点。
息子の頭には、申し訳程度の、小さなハンカチひとつ。
あーもー馬鹿だ。
ごめんね息子、こんな馬鹿なお母さんで。寒いよね。風邪ひいたらごめん。ほんとごめん・・・
そう思っていた私の目の前に・・・
パッと開いた、見事な花模様。
「これ、使いなさい!」
顔を上げると、車で信号待ちの老夫婦が、窓から傘を差しだしていました。
え、え、え、と驚きつつ、いやいいです!お借りできません!返せませんし!と言うと、
「いいのいいの、返さなくていいから。高い傘じゃないし」
と、上品な木組みの柄を突き付けてくるご婦人。
「あ・・・ありがとうございます」
恐縮しながらも受け取ると、満面の笑み。
ちょうど信号が変わり、ご夫婦は車を発進させました。
傘の下、茫然と車を見送る私。
信号待ちの、ほんの一瞬だった。
傘を持たない、見知らぬ親子に。
何の迷いもなく。
ハンカチをめくると、息子はすやすや、気持ちよさそうに眠っていました。
何もわからなくて、迷うことも多くて、失敗もたくさんするけれど。
たった一本の傘で、私たち親子の、それはもう様々なことが救われました。
こんな心遣いができる人に、私もなりたい。
そして、こんな心遣いをたくさん受けて、あなたは大きくなったんだよ、と。
息子に伝えていきたいと思っています。
いつか大きくなって、こんな心遣いが、できるようになってくれるといいな。